「心配するよりまず挑戦を」ー留学中の医師が語る”気軽な留学のススメ”ー
学生団体メドキャリが68人の医学生を対象に「海外留学したいか」と尋ねたところ、87%の学生が「とてもしたい・したい」と回答しました。
一方で「今すぐ留学したいと思うか」という質問へは、66%が「全く思わない・思わない」と回答しており、留学への関心は高いものの、決断する自信が持てない学生が多いことがうかがえます。
そこで9月4日、留学についてカジュアルに聞ける場を企画。医学生の海外留学支援を行っているNPO法人「Team WADA」代表理事の北原大翔医師(Georgetown University)、副代表理事の太田壮美医師(The University of Chicago)をお迎えし、「気軽な留学のススメ」というテーマでオンラインイベントを開催しました。当日の様子をお伝えします。
文章:伊藤春花
北原大翔医師プロフィール
太田壮美医師プロフィール
英語はコミュニケーションの「道具」
留学準備でまず気になるのは英語力です。イベントの最初のテーマとして、お二人に留学英語に対する考えをお聞きしました。
太田医師:私は医者になってから6年目で留学しました。留学前、臨床の仕事がとても忙しく、ほとんど英語の勉強をすることなく渡米しましたので、最初はたいへん苦労しました。初対面の上司から「まずは英会話学校に行け!」と叱られるほどでした。
北原医師:私は、語学力より大事なものは「コミュニケーション能力」だと考えています。
語学というのは自分の考えを相手に伝える道具にすぎません。学生のうちから表現方法を磨いたり、話がうまい人を研究して真似てみたりして、伝え方を工夫することが大事だと思います。大人になって働き始めると自分のくせを直すのはなかなか難しいからです。
現地に長くいると「仕事の英語はできるけど、日常英会話はできない人」と、「仕事の英語も日常英会話もどちらもできる人」の2パターンいることがわかります。
私はどちらかと言うと前者なので、今でも日常会話の勉強は怠っていません。
太田医師:たしかに、仕事の英語と日常の英会話では、日常会話の方が断然難しいです。逆にいうと、日常会話ができなくても、仕事で使う英語が話せれば仕事はできます。
アメリカは「外国人」に対して寛容であるのですが、仕事に関してはかなりシビアな面もあるので、英語ができないと解雇されることもあります。できるだけ事前に準備することが大事です。
私は英語ができないことで解雇寸前になりながらも、英会話に特化し学ぶ時間を確保するとともに現場で積極的に英語を使う努力をし、つたない英会話力ながらに最終的なゴールである「コミュニケーションをとる」能力を身に着けることができました。これを「現場力」と呼んでいます。自信がなくても飛び込んでみることでも勉強になると思います。
また、日本人はコミュニケーションにおいて、とかく要点のみを簡潔に伝えることを好みますが、実は要点とは関係のないようなスモールトークも大切なんです。
北原医師:留学先でも勉強し続けることは大前提ですね。それに加え、英語が苦手な人はできるだけ短い単語で伝えようとしますが、相手に推測させて理解してもらえるようセンテンスを加えて説明すると伝わりやすくなります。
実際にあった例だと、オペ室で「ガーゼ」が伝わらず、現場で困惑したことがありました。
「そこにある、白い布を取って」と言えば、伝わったと思います。
太田医師:全然伝わらないことは日常茶飯事です。一生懸命話したのに、伝わらず怪訝な顔をされることもあります。精神面を強く持って気にしないようにするというのも必要です。
また、「コミュニケーション能力を向上するには、具体的にどのような方法を取るのが良いか」という学生からの質問に対し、北原医師は、Youtuberなど話し方を研究している人の様子をよく観察すると、伝え方のヒントがたくさん得られると説明されました。
確かに、普段からYoutubeでライブ配信をされているお二人の話し方は、ジェスチャーや表情が豊かでとても惹き込まれるものでした。
チャンスを掴む姿勢が成果に繋がる
次に、留学で得られた成果についてお伺いしました。
太田医師:私の成果は「アメリカに来たこと」そのものだと思います。アメリカに行くチャンスがやって来たとき、迷わず踏み出したことが大きかったですね。たとえ短い期間で日本に帰ることになってしまっていても、アメリカで多様な価値観を持った人たちと接することで視野が広がり、今後の生き方の指針も得ることができたとしたら、大きな成果といえます。
準備を念入りにすることは大切ですが、機会を逃してしまうのは勿体ないので、チャンスが目の前に来た時、勇気を出して飛び込むことはとても重要だと思います。
北原医師:成果とは何かをしてよい結果を残すことを意味するとしたら、太田先生の言うようにまず挑戦する姿勢が大切です。野球に例えると、打席に立ち、バットを振ってみないとヒットやホームランの可能性も得られません。
成功している人の共通点は、アクションを起こし続けていることだと思います。小さなことでも、常に何かに挑戦することですね。
留学前に思い描いていた理想が実現できなくても、理想に向かって努力している過程にこそ意味があると思います。その過程をぜひ楽しんでほしいです。
また、「留学に必要な現地医師の推薦状はどのように取得すれば良いのか」という学生からの質問に対し、太田医師は「アメリカ人は本当に応援しようと思った人にしか推薦状を書かない」と説明されました。
病院見学の際などに積極的にコミュニケーションを取り、関係性を構築すれば、推薦状を書いてもらえるそうです。
留学準備全体を通して、待ちの姿勢ではなく攻めの姿勢で行動に移していく姿勢が必要なようでした。
イベント終了後のアンケートでは、68%の学生が「留学へのハードルが低くなった」と回答しています。
お二人のメッセージから、参加者は勇気を出して一歩踏み出してみることの重要性を学んだようでした。
Team WADAのYoutubeチャンネルでは、毎週土曜夜9時から生放送で、世界各国で活躍する医師がライブ放送で海外留学の”今”を伝えています。
ぜひライブを視聴して、留学へ向けた情報収集をしてみてはいかがでしょうか。
(写真:当日の様子)
■NPO法人 Team WADA
海外で活躍する医師、看護師、薬剤師、その他さまざまな職種の 情報をリアルタイムで発信するNPO法人です。
海外からの情報発信を礎に、医療関係者、医学生の海外留学・就労の支援や海外で働く医師同士の交流の場を提供しています。
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