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【イベントレポート】「医療から、言語・文化の壁なくしたい」―医学生留学の本音トークvol.1

臨床実習を通し、「患者の多様な言語・文化・社会背景への理解・受け入れ態勢が十分でない」と感じたという新渡戸記念中野総合病院研修医2年目の川畑有紗先生(杏林大学医学部出身)。M4では「University of Leicester」へ、M6では「King’s College Hospital神経内科」での1か月間の臨床実習と、「St. Joseph’s Hospice」での終末期ケア見学を体験されました。
今回は、「医学生留学の本音トーク〜vol.1 LONDON〜」と題し、川畑先生が主にM6での留学経験で得た学びと今後の医療のあり方についての考え、および海外留学を志す学生へのメッセージを、1時間のオンラインイベントにて伺いました。

「留学テーマを持とう」―Take Home Message

―先生は昔から英語が堪能だったのでしょうか。

川畑先生:留学では英語力よりも、コミュニケーション能力や熱意の方が大切だと私は考えています。私も英語がそれほど堪能なわけではありませんでしたが、強い思いがあり「トビタテ!留学JAPAN」の8期生として選出頂き、M6で留学に参加しました。その経験をご紹介しますが、まずは下記の3点だけでも、心に留めていただければ幸いです。

Take Home Message
▶︎留学先は協定校だけじゃない!

→個人的なアプライも可能
▶︎留学テーマを持とう!
→海外クリクラの時期は短いからこそ、目的を持って渡航することが大切
▶︎今こそ準備を!
→渡航できない時期ではあるが、今こそ語学力向上などの下準備が大切

目指す医療―「病気を見ずして病人を見よ」

―先生が留学に踏み切った理由を教えてください。

川畑先生:私の理想の医療は、「病気だけでなく、患者さんを取り巻く家族・文化・経済面など様々な背景まで包括的にケアする医療」でした。M4の時、大学のプログラムで渡英した際、現地のホスピスで「カルチャーサポートワーカー」と呼ばれる方が、患者さん個人の背景まで理解したきめ細やかなケアを行っていたことが印象的で、M6で再度渡英することを決めました。
この時の留学のテーマは、「病気を見ずして病人を見よ」。患者の多様な言語・文化・社会背景への理解・受け入れ態勢を学ぶことを意識していました。

留学準備の具体的方法

―留学先はどのようにして見つけたのでしょうか。

川畑先生:留学先の探し方は、「大学からの派遣」「IFMSAなど学生団体」「知人や家族の紹介」「公募している団体経由」等様々な方法があると思います。
私も「比較的早めに合否がわかり、イギリス首都ロンドンで、神経内科を勉強できる大学」という条件で検索し、「King’s College London」への留学を決意しました。申し込み時に必要となるものは以下の通りです。

▶︎推薦書2通(医学部長からの推薦書)
▶︎英文成績書
▶︎IELTS(各分野6.5以上)
▶︎保険加入証明書
▶︎Personal Statement(400words・志望理由の小論文)
▶︎申込料$100
▶︎実習費$200
▶︎住宅は各自手配

―大学の病院実習との折り合いはどのようにつけていたのでしょうか。

川畑先生:私は杏林大学医学部出身ですが、杏林大学ではM5の1年間がポリクリで、M6の4月5月は選択実習の期間でした。選択実習の期間は、国内外関わらず実習先を選択できました。そのため、M5の5月から本格的に留学先を探し始め、8月に申し込みを完了させていました。

現地での学びー言語の違いが障壁とならない医療を目の当たりに

―現地では具体的に何を学んでいたのでしょうか。

川畑先生:King’s College Hospital神経内科での1か月間の臨床実習と、St. Joseph’s Hospiceでの終末期ケアの見学です。
King’s College Hospitalでは神経内科の実習はもちろん、英語力のブラッシュアップのため自分で患者の診察を取りに行き質問するようにしたり、ドクターにも積極的に話を伺いに行きました。また神経診察も実際に1人で行う機会もありました。その他GPと大学病院双方の医師から話を伺い、総合診療の重要性や今後の日本医療を考察しました。
St. Joseph’s Hospiceでは多様な死生観へのケアを見学し、常訪問診療や、聖職者の方との懇談を通し患者の多様性へのケアを学びました。

―最も印象的だったエピソードについて教えてください。

川畑先生:外来実習の際の、スペイン系移民の小学生くらいのお子さんと親御さんとの出会いですね。その親子は英語を話すことができなかったので、診察の際に同時通訳サービスを利用したのです。これは24時間利用できるサービスで、患者と医師の会話を通訳者がリアルタイムで通訳するというものです。
患者であるお子さんはてんかんという病気だったのですが、対面での診察ができたことで、親御さんが安堵の涙を流されていました。
このサービスのお陰で、言語が異なろうとも通常通りの医療が受けられることに深く感銘を受けました。
日本にも通訳サービスはありますが、大半がボランティアによるものです。そのため、今後は通訳サービスの拡充や指差し会話帳を使った他言語での診療を練習するなど、言語や文化の違いが医療の障壁にならないための活動に取り組みたいとも考えています。

医学生へ留学機会をー帰国後の活動

―帰国後の活動について教えてください。

川畑先生:帰国後は、医学生の留学機会醸成のため、また医療現場での文化・言語による壁をなくすため、様々な活動をしています。まずは「医学生向けのワークショップ」です。「トビタテ!留学JAPAN」で出会った仲間と共に、医学留学への思いを深掘りし、留学テーマを見つけてアクション計画を立てるイベントを開催しています。また「国際医療の紹介」活動も行っています。他言語診療の紹介や、ポケトークを使用した他言語診察体験などを実施しています。

「コミュニケーション能力と熱意」の重要性

―英語力を高めてから留学するか、留学先で英語力を高めるのか、どうするのが良いのか悩んでしまいます。

川畑先生:留学先ではIELTS6.5が必須で、私は7で渡英しましたが、それでも十分とは言えませんでした。しかし、最も大切なことは「英語力の有無」というより、「コミュニケーション能力」や「熱意」だと考えています。
ブリティッシュ・イングリッシュ、さらに専門用語が飛び交う環境の中で私も苦労しましたが、とにかく患者さんやドクターに話しかけること、分からないことがあれば素直に聞くことを意識していました。
勿論、語学習得という面で大変なことも多くありますが、ある程度の英語能力があるのならば、勇気を出して飛び込んで欲しいと思います。そして学んだことを日本の医療現場に持ち寄って、自分の糧として生かして欲しいです。

実際私も「詳細はわからなかったけど、少しわかったからもう一度質問してみよう」「今自分がいる環境で吸収できることは何だろう?」と常に考え、行動する力が確実に身につきました。

「トビタテ!留学JAPAN」の概要と選考過程

―川畑先生が利用した、「トビタテ!留学JAPAN」について教えてください。

川畑先生:「トビタテ!留学JAPAN」は2014年に文部科学省が主催で開始した、給付型の奨学金プログラムです。
私は理系コースで採用となり、奨学金、留学準備金、授業料を支給頂きました。

―選考方法について具体的に教えてください。

川畑先生:1次審査は書類審査です。留学の目的や、その目的を実現するため既に取り組みを実施しているのかどうか等が評価されます。2次審査は20分間の個別面接とグループワークです。人物的に優れていて、留学での学びを日本の産業界に還元できるかどうかが評価基準となります。

例えば産業界に学びを還元できるかどうか、という質問に対して私は、「人は国の資本であるため、その国の健康を守る医者は、間接的ではあるものの産業界に貢献し得る」という回答をしました。

―「トビタテ!留学JAPAN」で得られるものは何でしょうか。

川畑先生:まずは「熟考の機会」です。留学の目的や計画、自分のキャリア設計までもしっかり考えるよい機会となります。そして「トビタテ生とのコミュニティ」です。異なる分野の優秀な方とタテヨコの繋がりをつくることができ、大きな財産となります。

「医療から、言語・文化の壁なくしたい」今後の展望

―今後のキャリアプランについて教えてください。

川畑先生:現地では、大学病院とクリニックの患者の棲み分けがよくされていたことが印象的でした。私も今後は中小規模の病院で神経内科を勉強し、大学病院との棲み分けについて自分で確かめていきたいと考えています。特に神経内科は急性期の治療が中心になるため、患者さん個々の背景を含め包括的にケアできるリハビリテーション科に興味があります。

―若い医療者に向け、最後に一言頂戴してもよろしいでしょうか。

川畑先生:若い医療者が海外現場を早いうちに経験し、そこでの学びを日本に持ち寄って日本医療に貢献することが大事だと考えています。
留学に関して不明なことや不安なことがあればいつでもお力になりたいと考えていますので、気軽にご連絡いただければ幸いです。

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