【医学生のその時心が動いた】#3:形成外科

トピックス

皆様は最近、心を動かされたな, 知ってよかったな, という感動体験はありますか?この文章は、筆者が実習で感動した体験を自由に綴っていきます。更新は不定期ですが、どうぞ温かい目で見守っていてくださると幸いです。

【形成外科】

今回のテーマは「形成外科」です。といってもあまり馴染みのない方が多いかもしれません。形成外科と整形外科を混同している人もいるかもしれません。ですから、今回はまず違いについて触れた後で、僕が形成外科の手術で感動したことを書き連ねていきます。

【形成外科と整形外科の違い】

形成外科」は、”身体に生じた組織の異常や変形、欠損“などに対して、機能的および形態的に改善を目指す外科領域です。

整形外科」は、”身体の芯になる骨・関節などの骨格系と、それを取り囲む筋肉やそれらを支配する神経系からなる運動器“に対して、機能的改善を目指す外科領域です。

本当に簡単に分類するとしたら、体の表面が形成外科体の内部が整形外科、といったところでしょうか。

【臍(さい)形成術】

尿膜管依存に対しての腹腔鏡下尿膜管摘除術を見学したときに、その手術がお臍(へそ)をとってしまう手術であったため、連続して臍形成術を行うために形成外科の先生が脇でスタンバイしていました。尿膜管摘除術自体はあっと合間に終わったのでついでに臍形成術も見学させてもらうことにしました。その時の手順と手技が美しかったので語ります。(笑)

状況としてはお臍(へそ)を周囲ごと円形に切り出して切除したので、お臍(へそ)があったところに小さな穴が空いていて、腹腔と外気が穴によって交通しているところから臍形成術が始まります。

準備段階として術野を確保するためにお臍(へそ)の近くの左右の表皮に糸を通して、両端をペアン(洗濯バサミ的なやつ)で挟んで置いておきます。こうすることでその紐を引っ張れば皮膚が左右に引っ張られるので、筋鉤(きんこう)を使わなくて良くなります(どっちみち縫い閉じるので、筋鉤は入れることができません!)。※筋鉤は術野を広げるために組織を引っ張る道具です。

いよいよ臍形成に入ります。まずは皮膚の一番下にある腹直筋に糸をかけるため、穴の一番上(①の糸)と一番下(②の糸)の2箇所に縫合糸を長めにかけて、結ばずに残しておきます。この時点で穴の縦に2箇所糸がかかった状態になります。

次に上下2箇所の縫合糸(①と②)の間にある、左右の腹直筋を縫い縮めていきます(糸を赤と青で表現)。順番に左右に糸を通していきますが、個々の縫合では結ばず、最後にまとめて縫合します。そうすることで左右でズレた際の修正を可能にしています。(ズレると小さな穴が開くので感染などの不具合が生じやすくなる)

左右の腹直筋が縫合し終わったら結び目1mmで切断し、次に腹直筋の上の皮下組織を縫合していきます。この時、上下にかけた2本の糸は皮外に残したままにしておき、まだ縫合しません。

皮下組織を縫合し終えたら、ようやく皮外に残してあった2本の糸(①と②)を、テンションをかけてしっかり縫合します。すると穴の断面を横から見た時に、腹直筋と外皮が上下から縫合されて接着するので、臍が上下2点で凹みます。そうすることで縦に割の入った綺麗な臍が出来上がるというわけです!!

【まとめ】

実際にこの再建術を見た時、驚きとともに、これが機能美と形態美の両立か、と思いました。今回の記事はこれでおしまいです。また次号で会いましょう。

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。