AI問診で医師の業務効率化を実現

 

最近、私たちの生活の中にも少しずつ浸透してきた人工知能(AI)技術。医療現場でも導入する動きが加速しています。患者と医師との重要なコミュニケーションである問診にAIを活用することで、多忙な医師の負担を軽くできるのではないか。Ubie株式会社は日本でいち早く「AI問診」に着目し実用化を成し遂げた注目のベンチャー企業。久保共同代表取締役に直撃インタビューしました。
取材: 吉富櫻嘉 /文・写真:稲垣麻里子

 


久保恒太さん

(Ubie株式会社 共同代表取締役)2013年東京大学大学院在学中から症状から病名を予測できるシミュレーションの研究開発に着手する。大学院卒業後、エムスリー株式会社に就職、患者と医師をつなぐQ&Aサービスなどの ソフトウェア開発とWebマーケティングに従事しながら、高校時代の同級生である阿部吉倫医師とともにAI問診のプロトタイプを実装させる。2017年Ubie株式会社を創業。

AI問診サービスUbie→ https://www.introduction.dr-ubie.com/

Ubie株式会社→ https://ubie.life/


 

 

はじめまして。本日はよろしくお願いいたします。

 
 

よろしくお願いいたします。

 
 

AI問診って初めてなのですが、どんなサービスなんですか?

 
 

実際にやってみますか。

 
 

ぜひ!ありがとうございます!

 
実際に操作をさせてもらいました!
 

病院で受診するとき、最初に患者さんに渡される紙の問診票がありますよね。それの代わりにタブレットが渡されます。この画面、見覚えありませんか?デジタルに慣れていない高齢者でも使えるように、カラオケのリモコンをイメージして作られています。

 
 

確かに。わかりやすいですね。

 
 

どんな言葉でもよいので、症状を入力してみてください。病名じゃなくても、もやもやとかずきずきとか、いろいろな言葉で反応し、可能性のある病気を絞り込んでいきます。医師が質問してくるのをイメージしてください。

 
 

ほんとだ。スゴイ!

 
患者さんの入力はタブレットで行う
 

問診で病気をある程度絞り込むには、紙の問診だと質問数に限界があるのですが、このAI問診は2000の症状、1000種類の病気に対応して病気を予測します。出てくる質問に答えていくだけなので、高齢の患者さんでも一人で対応できます。カルテIDの番号と連動しているので、入力結果を電子カルテと突き合わせて反映できます。

 
 

結果が電子カルテにも記録されるんですか?

 
 

医師が見る画面はこちらです。この画面が電子カルテのIDと対応しているので、コピーアンドペーストで電子カルテに内容を反映させられます。タブレット上で、患者さんにはやさしい言葉で質問しますが、医師が見る画面には専門の医療用語に自動的に変換されます。これで医師カルテを書く時間が大幅に省略できます。特に大病院では、患者さんのカルテは複数のスタッフに共有されるため、みんながわかるように書かないといけない。これには相当な時間と手間がかかるんです。

 
 

右に表示されているのが予測結果の病名ですか。

 
 

問診結果で可能性のある病名が表示されます。病気の内容を詳しく知りたいときは疾患データベースと連携しているので、そのまま調べて閲覧もできます。こちらの疾患データベースは今日の臨床サポート(https://clinicalsup.jp/)というエルゼビア・ジャパン(株)様が提供しているサービスと連携しており、その場で今日の臨床サポートの詳細な疾患情報にアクセスすることができます。さらに、お薬手帳を持参している患者さんにあらかじめ提出してもらい、写真で撮影するだけで、問診と一緒に服薬歴も記録されます。最近はジェネリック薬品を処方されることが多く、先発薬との照合も自動でできるので、調べる手間も省けます。

 
医師は患者さんの問診結果を見ながら診察できる
 

何から何まで至れり尽くせりという感じですね!

 
 

弊社は創業時から医師の業務効率化に絞ってサービスを展開しています。働き方改革で医師の過重労働が社会問題化していますが、クリエイティブではない作業の多くはAIやシステムを使ってほとんど解決できると思っています。新しくシステムを導入するのでなく、既存の電子カルテと連動することで、どの電子カルテベンダーとも連携できます。

 
 

このサービスのアイデアはいつ思いついたんですか?

 
 

2013年です。当時東京大学の大学院で思考シミュレーションの研究室にいました。教授にシミュレーションであれば何をやってもいいと言われて、自分はまったく無縁でしたが、解決しなくてはいけない課題が多そうな医療の分野がいいと漠然と考えました。

高齢化でこれから日本のマーケットで伸びる領域だと確信していましたので、「医師の思考シミュレーションをやりたい!」と教授に訴えたところ、今まで誰もやってないから無理と言われて相手にされませんでした。それで「自分でやるしかない」と思いました。症状というインプットに対して病気というアウトプットを返してあげるという関係性をどうやって表現するか、最初は医療文書をひっぱってきて格闘する日が続きました。1年以上、一人でやっていましたが、できませんでした。

 
 

1年も一人でやっていたとは、気が遠くなりそうですね…

 
 

心が折れそうになりました。医療者に協力してもらうしかないと思い、現在、Ubieでともに代表を務める阿部に聞いたのです。阿部は高校の同級生で、かつては一緒に受験勉強をしていた親友です。彼が医学論文をどんどん探してきてくれました。そのデータを大量に入力し、アルゴリズムを考えながら、どうやったら実際に医師がするようないい質問が生み出せるかを考えました。当時は学生なので圧倒的に時間もあったので、地道にやっていました。

 
 

今まで誰もやってこなかった分野なんですか?

 
 

かつていろいろな人がやってきたのは、既にあるテキストをもってきて、自然言語処理を使って、そこから症状と病気の関係、インプットとアウトプットの関係を出すという方法でした。自分たちはそのアプローチとは異なり、実際に研究論文に目を通して、その確率データを打ち込むという作業をひたすらやっていましたが、限界がありました。

病院で実際に診断頂いた内容をフィードバックいただくことにより、問診内容と紐付いた病気のデータが手に入るようになりました。これをもとに機械学習による「教師あり学習」をおこなったところ、とても高い精度で病気の候補を提示できることが分かってきました。

2014年から二人で始めて、自分がプログラミングとソフトウェア、阿部が医学という役割分担で、ひたすらデータの入力を続ける作業を2017年に起業するまでは二人でやっていました。

 
 

創業前に3年もかけて、基礎を作られたということですね。もともと起業家志望だったんですか。

 
 

大学1年のときにマッキンゼー出身の先生に出会いました。その先生が投資家もやっていたので、学生に起業を推奨していました。大学に入学したばかりだったので、影響を受けてすぐにその気になりました。大学時代は京大でケミカルエンジニアリングを勉強していたので、ミミズの糞をつかって生ごみを有機肥料にするエコビジネスを考え、ビジコンで優勝もしました。

 
 

大学1年から起業家志向だったということですね。途中でなぜエンジニアに転身されたんですか?

 
 

当時は環境ビジネスがブームだったので、いけると思ったのですが、肥料のビジネスはマーケットが小さいことに気づいたんです。それと比べると、日本は医療で年間40兆円を超え、非常に大きいといえます。高齢化が進行する日本でまだ確立されていない医療分野のシステムを開発すれば、グローバルに展開していけるのではないかと。AI問診サービスは過去にも様々な企業が手がけようとしていたのですが、かつてはコンピュータの性能が追い付いていなかった。2013年にIBMがやろうとしていましたが、カルテが紙だったため、データがとれなかったんです。

そこで、まだ誰もやっていないサービスをやってみようと思いました。コンピュータの性能もAIの技術も高まってきて、やるなら今のタイミングだと確信しました。けれどもなかなかいい質問が作れず、自分は大学院を卒業して就職、阿部は研修医として前期研修に入り、二人とも時間がとれず、起業するのに時間がかかってしまいました。

 
 

世界で同じようなAI問診サービスをやっている会社はありますか。

 
 

BtoCですが、ADA Healthというドイツの会社のシステムの精度が高いと言われています。ただ、AI問診自体、世界でもそれほど普及していないサービスで、まだ圧倒的な勝者がいるというわけでもありません。

 
 

テクノロジーがどんどん進んで、精度が高まると、医師が必要なくなる時代が来るのでしょうか。

 
 

医師が必要なくなることは絶対ないです。「AI問診Ubie」で医療の効率化ができれば、医師はエキスパートにしかできない仕事に専念できます。
そもそもこの事業のきっかけは、自分が学生時代、風邪をひいて病院にかかったとき、保険で2000円ほど支払って、これなら自分で市販薬を買っても同じだと思いました。たとえ保険診療であっても、決して豊かではない学生にとってお金はもったいないし、医師の労力ももったいない。だれでも思い付くことではありますが、これを自分の手で解決してみたいと思ったんです。

医師が過重労働で身を削るのではなく、医師の業務を効率化して、真の意味で患者さんに寄り添える医師が増えることに寄与していきたいです。

 

 

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